マーケティング、エバンジェリズム、ときどき旅。

ホントに自分がなりたいのはマーケターかエバンジェリストか、はたまた旅人なのかを徒然に書いていくブログです。

power of the community、またはおいしい味噌汁は如何にして作られるか?

おいしい味噌汁、皆さん大好きですよね。でも誰がどう作っても、必ず美味しくなるというわけではない。おいしくなるには理由があるわけです。

いいコミュニティを創ったり、コミュニティの力を引き出すのも、それと同じですよ、というハナシを高知でしてきましたので、その振り返り的なブログを。

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※ちなみに、私は素揚げのナスを使った味噌汁が好きです。下記で高知=カツオのイメージ全開にしてますが、ナスも高知が生産高一番!

www.kochike.pref.kochi.lg.jp


コミュニティリーダーが高知に集う!

カツオといえば高知、ですが、その高知に初鰹(5月)、戻り鰹(10月)という旬の時期に、コミュニティを運営したりリードしたりしている人たちが集まるコミュニティリーダーズサミット in 高知(以下、CLS高知)というイベントがあります。今年で4年目、そして10月16日に通算8回目を迎えたわけですが、緊急事態宣言やマンボウ明けというタイミングもあり、ハイブリッド開催ながらも高知の会場には県内外から50名近い方々が集まって(オンラインを含めると100名以上のエントリー)開催できました。

eventregist.com

本編の前にも、ワーケーション企画があったり、本編後にも大人の遠足企画があったりと、長い人だとまるっと5日間くらい高知に滞在して、コミュニティについて(カツオを食べながら)あれこれ語ったり、企んだりしています。人呼んで「コミュニティ合宿」状態

power of the community =「コミュニティの力」とは?

今回は、Code for Japan武貞さんAsana Japan / CMKT長橋さんとともにコミュニティの力とは何か? それはどう作られるのか? について語るセッションを担当しました。

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コミュニティに関わっている人ですと、いろんなシーンで「コミュニティの力」的なものを感じることがあると思います。しかしながら、その力が何であるかについては人によって理解に結構差があるのではないでしょうか? このセッションは、そんな「コミュ二ティの力」の正体や、それが生まれるメカニズム的なところを、コミュニティ最前線なお二人と紐解き、解像度を上げていくことで、コミュニティとのかかわりをもっと上手にできる助けになれれば、、、ということでセットしたものです。

で、そもそも「コミュティの力」とは何か?ですが、これには大きく以下の2方向があると思っています

  • 個人を束ねてより大きな力にする
  • コミュニティによって個人の力(信頼、能力)が強化される

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皆さんは、どちらの視点でとらえていましたか?

ビジネスでコミュニティを運営する人は、前者=束ねてより大きな力にする方向で捉える人が多いかと思います。一方で、コミュニティに参加したり登壇したりすることで、個人の信頼貯金が増えたり、自分や他のメンバーの能力に気づかされたり(「外のモノサシ」効果)することもあるかと思いますが、これは後者の視点ですね。

では、長橋さん、武貞さんは、どちらの視点で「コミュニティの力」を見ているのか?

1+1+1=10!

長橋さんがセッションの中で紹介してくれたのが、この式。算数的には正しくないですが、コミュニティ的には「あるある」と感じる人も多いのではと思います。要は3人の力が、コミュニティというケミストリーを起こす媒体を通すことで、3ではなく10に増幅される、というものです。ただし、もちろんどんな人でも3人集めれば10の力になるわけではない、そのケミストリーを起こすために重要なポイントとして紹介してくれたのが、①Delight、②Spotlight、③Co-createの3ステップです。

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①のDelightは、コミュニティに参加してくれた時に暖かく迎えること、具体的にはAsanaのコミュニティでは単にメッセージを送るだけでなく、Welcome Kit 的にSWAGを送ったり、大き目のイベントの前にもスペシャルなプレゼントを用意したりするそうです。ここでのポイントは、全員に対して行われる、ということですね。

で、Delightされた人たちの中で、貢献度の高い人を脚光をあてるのが②のSpotlight。コミュニティメンバーの活動を、他の人にも見えるカタチで賞賛、感謝するステップです。これは機会はメンバー全体に平等に提供されつつも、脚光を浴びるのは成果をあげたり貢献度が高かったりする人たちに絞られるのが①との大きな違いとなります。Asanaでは、動画コンテストやマイタスク選手権(←タスク管理ツールのコミュニティならでは!)等の活動からSpotlightの対象者を選定したりしているとのこと。

この絞り込み、選定の基準やプロセスが公正、透明であることが重要で、そうすることでSpotlightを浴びたメンバーが、他の参加者にとってのロールモデルになる=そのポジションを目指すフォロワーを生み出す、という流れができてきます。影響力の連鎖ができるとも言えますね。この連鎖により、1+1+1=10を達成する素地も作られるわけです。

そして最後の③Co-Creation。コミュニティにロールモデル、フォロワーの構図がができることで生まれる影響力の連鎖を、コミュニティの胴元であるビジネスサイド(長橋さんの例だとAsana)がコミュニティ運営や提供製品、サービスの改善に活かしていく流れです。

Asanaでは具体的に、コミュニティメンバーからコミュニティ運営の改善点や新しいイベントフォーマットについてフィードバックをもらったら積極的に取り入れてみたり、Asanaのサービス自体の機能改善やUX向上にもコミュニティメンバーに意見を聞いて取り入れていくサイクルを作っているそうです。こうしてコミュニティから出たいろんなアクションが、コミュニティそのものや、コミュニティの核となるサービスの強化に取り入れられ、メンバーに還流されるフィードバックループができることで、1+1+1=10に近づいていくのです。

コミュニティの声を製品やサービス改善に取り入れるフィードバックループの構築は、ビジネスサイドにとっては、1+1+1=10を達成するカギとも言えますが、コミュニティだけ作っても、製品開発、事業開発側にフィードバックループを回せる仕組みがないと絵にかいた餅になりがちです。実際そうなっている組織や事業も沢山見てきています。

1+1+1=10の実現のためには、製品開発、事業開発サイドも、コミュニティ活動にコミットが無いといけないことになりますね。(で、Asanaはそれが実践できているということでしょうし、私が所属していたAWS等もちゃんとフィードバックループができている事業の一つだと思います)

コミュニティ施策をビジネスで最大限に活かすには、より高い視点でのコミュニティへのコミットメントが必要になることが、このことからもわかるかと思います。

Ask not why nobody is doing this. You are the "nobody"=自分ゴト化

一方で、コミュニティのメンバーに「自分ゴト化」してもらうことが、「コミュニティの力」を生み出すというを話をしてくれたのがCode for Japanの武貞さん。

Code for Japan は製品やファンコミュニティと異なり、CivicTechという社会課題に関心がある方が参加するというカタチなので、メンバーのベクトル合わせ自体はかなりしやすい素地がありそうです。実際、Code for Japan の行動規約:Code of Condact では、前述した「リーダーとフォロワー」という関係性よりは、お互いがリスペクトし、オーナーシップ(主体性)をもってコミュニティに貢献する、という世界観が書かれています。そうした「自分ゴト化」できるメンバーが増えれば、コミュニティの持つ影響力や力は増大しやすそうですね。

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コロナ禍前は、Code for Japan のSlackの登録者数は400名程度だったのが、コロナ禍でやるべきこと、かかわるべきことが多くなったことで、一気に5,000名を超えるまでに成長したそうなのですが、自分ゴト化しやすい人が10倍以上に増えたら、これこそ「コミュニティの力」も爆発的に拡大することは間違いないでしょう。

皆さんも記憶に新しい、東京都での新型コロナウイルス感染症対策サイトのCodeが、瞬く間に各県のサイトに展開されるというピーク性のあるプロジェクトに対応できたのも、こうした「自分ゴト化」ができるコミュニティメンバーが多くいらっしゃった証拠であるといえますね。

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そして、コミュニティメンバーに「自分ゴト化」を促すコトバとしてよく使われているのが台湾のCivicTechコミュニティ:g0v のスローガンである「Ask not why nobody is doing this. You are the "nobody"」です。

Code for Japanの代表理事である関さんの訳によると、「誰もその課題を解決しないと嘆くならば、あなたが最初に始める「誰」になれば良いじゃないか」ということになりますが、こういう思いを共有しているコミュニティの力は強くなりますよね。

おいしい味噌汁になるために

もう一つ、武貞さんがほっこりするスライドでご紹介してくれたのが、味噌汁理論です。

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これは、Code for AIZUの藤井さんが提唱している「(CivicTech的活動における)コミュニティは作るものではなく、エネルギーの流れから浮かび上がってくるもの」を、もっとわかりやすく、味噌汁にたとえた理論とのことで、いただいた内容をそのまま記載すると、

「味噌汁が温かいとき、表面に模様(構造)ができますが、冷めると味噌とダシが分離」する(散逸構造論)
「みんな同じ」を志向してはダメで、差異の存在が構造を成立させる(=コミュニティの駆動力)、自己組織化のメカニズムが重要。

とのこと。

私なりに理解すると、個々のメンバー(具材や味噌やダシ)がどんなに良くても、コミュニティの熱量やお互いのかかわりが削がれてしまうと(冷めてしまうと)、コミュニティの分裂、弱体化につながるということかと。そのために、味噌汁が冷めないようにするのと同じように、コミュニティの熱量を上げたり保温したり、メンバー間のかかわりが絶えないようにファシリテーションすることが大事なんだと思います。それこそが、いわゆるコミュニティマネージャーや、ファシリテーターに求められる重要な役割の一つといえるでしょうね。

あと、”「みんな同じ」は強い構造にならない”とはいえ、Code of Conduct や後述するコミュニティの「旗」に同意するという一定の方向性は必要なんだと思います。

味噌汁にたとえると、味の方向性が合わないものは、どんなにあっためてもおいしくはならないのと似ていますね。味噌汁にマヨネーズやソースを入れる方はあまりいないはず。違っていればいい、というのではなく、一定の(味の)方向性が必要で、コミュニティもまさにそうだな、と。

ちなみに、あまり入れないかもしれないですが、味噌汁にトマトやケチャップを入れると更においしくなりますので、お試しを! 方向性というのは和風、洋風というふうに簡単には分けられない好例ですね。

実はトマトも高知がメッカですね。いろんな種類がありますがどれも濃厚でおススメです。初めからピューレやソースになっていると料理にも使いやすいですが、それなら人口5000人のとまと村・日高村のコチラがおススメです。

hidakawanowakai.shop-pro.jp

とはいえ、コミュニティには「旗」が重要

お二人に共通しているのは。コミュニティ全体の力を増幅するには、参加している個々人への注力が重要ということが挙げられます。

一方で、増え続けるコミュニティメンバー全員に、運営側がいつまでも寄り添い続けることはできないので、それぞれのロールモデルや関与すべきプロジェクトを見つけ、自分ゴト化が促されることで、メンバーが自走化していく、という構図も似ています。

その際、自走が暴走にならないようにするために必要なのが、このコミュニティは何のための存在しているか、何を目標としているか、という「旗」の存在です。

お二人のお話から、「コミュニティの力」を生み出すメカニズムやHow To について気づきを得られたかとい思いますが、その大前提として、コミュニティには「旗」が必要だということを忘れてはいけないでしょう。

 

一次情報

私なりにセッションでお話した内容をままとめてみましたが、何事も一次情報にあたるのは重要ですね。ということで、下記に資料やアーカイブへのリンクを置いておきますので、ぜひ皆さんも一次情報から得た気づきなどを共有いただけると嬉しいです。その際は #CLS高知のハッシュタグでお願いします!

■長橋さんのスライド 

 

■武貞さんのスライド

 

■セッションのアーカイブ

※映像開始後30分くらいからセッションスタートです。

www.youtube.com

次回のCLS高知は?

今回のCLS高知のハナシを面白いと思った方、次回は2022年5月21日(土)に高知で開催されます。旬の初鰹とディープなコミュニティ話にどっぷりと浸る合宿体験をしたい方は、ぜひSave the Dateを!