パラレルキャリア月報 -- Mar 2018
GW前に終わらなかった、3月の月報です。例によって、社内打ち合わせやクローズドなセッションは省いてます。カバー写真は、米国出張(GTC2018)の際に立ち寄ったロサンゼルスのグリフィス天文台。ラ・ラ・ランドでも有名。
サマリー
3月のハイライトの一つは「マンガ化」。提唱し続けていたコミュニティマーケティングの考え方が、Web担の「教えてホシイの!」シリーズに取り上げられてマンガで解説されました。いつもは講演とかで何十分もかかるハナシが、マンガだと5分程度でわかる簡潔さに。改めて、マンガフレームワークのすごさがわかりましたね。
また、AIの導入現場を直接見学できたのも大きいですね。ディープラーニングを工場に導入されている武蔵精密さんに伺って、実際の工程を拝見しながら導入の背景や狙いについて直接お話をお聞きすることができました。何事も現場で見聞きすることは大事だと再確認した次第。
AI工程 #abejaai pic.twitter.com/xVAu9paI2A
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月21日
3月はAWS時代の海外の同僚(現Googleと現MS)がそろって東京に来るというタイミングがあり、東京のEx-Amazonians たち(現役含む)にて迎え撃つ会合も。世界は狭い!
登壇ログ
3月の登壇ログはこちら。
JP_Stripes Tokyo Vol.6 (3/5) [Stripe]
最近は進行もコミュニティメンバーの方に進めていただいけているので、運営がすごくスムースになってます。当日もユーザの方やGoogleの方など、多くのセッションで大変助かりました。当日の模様はこちらのツイートまとめで。
CMC_Meetup Vol.8 (3/7) [CMC_Meetup]
この回のCMC_Meetup は、コミュニティマーケティングでもっとも重要といえる「ファーストピンの見つけ方、育て方」をテーマに実施しました。皆に関心の高いテーマだったこともあり、過去最高の150名のエントリーをいただき、会場は満員御礼。また、「コミュニティマネジメント」と「コミュニティマーケティング」の違いについてもお話をしたところ、多くの関心を」いただくことに。この部分はまだまだ混同されることが多いようです。
参加者の方のブログもコンスタントにでてきており、ありがたい限り。アウトプットファーストが浸透してきてますね。
次回のCMC_Meetup は5/15の開催なので、ぜひお越しを。
JAWS DAYS 2018 (3/10) [Stripe / CMC_Meetup]
今年のJAWS DAYS は、 JP_Stripesとしてコミュニティブースを出す一方、コミュトーークというセッションでは、CMC_Meetup としての登壇もさせていただくなど、複数の顔で参加することができました。
ブースのほうにも、多くの方に来ていただきましたが、AWSのチーフエバンジェリスト、Jeff Barrにもブースに来てもらえました。で、 #purplejeff でパチリ。
Re:union. The purple brothers!! #purplejeff #jp_stripes #jawsdays pic.twitter.com/gTq6XUK7l3
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月10日
コミュトーークのほうは、アスキーさんに記事にしてもらっていますので、こちらを。ひな壇の皆さんの笑顔がいいです。
ABEJA Cloud AI Night in Nagoya (3/21) [ABEJA]
日本では初の地方都市開催となる、名古屋での Cloud AI Night の開催でした。名古屋は自分のこれまでの経験上、なかなかコミュニティに人が集まりにくいイメージもあったのですが、今回はキックオフにもかかわらず会場は満員御礼。あまりの反応の良さに、思わずブログも書き起こしてみました。
次回の名古屋は6/22開催の予定ですので、中京圏の皆様はお楽しみに!
ウイングアークユーザー総会2018 (3/22) [Still Day One]
ウイングアーク・ユーザー総会で、パネル進行をさせていただきました。この会で驚いたのは、従来の「既存ユーザ」主体のユーザ会を発展解消し、コミュニティスタイルの新しい運営に完全移行を宣言(して、その後実際に運用に移行したこと。コミュニティマーケティングの良さがアタマではわかっていても、既存のモデルを壊してまで移行するのはなかなかできないことが多いなか、この動きは注目ですね。このあと、どのように軌道に乗せていくのか、注目の活動です。
パネルの進行スライドはこちらを。
当日の模様はコチラのレポートでも。
JP_Stripes in 松山 vol.2 (3/24) [JP_Stripes]
松山で2回目となるJP_Stripes 。今回は、松山のオーガナイザーのお二人がAmazonGo体験者ということもあり、同じく体験者である私も交えて3名での「キャッシュレス」対談も実施。Stripeとの技術的な関連は直接ないのですが、キャッシュレスがUXや経営にもたらすインパクトをご理解いただく上でも、いいセッションだったかと思います。3人のトークの進行スライドはこちらを。
このセッション用にAmazoGo の話をスライドに落としたので、割とこのあとのミートアップでもAmazonGoの話をすることが多くなりました。やっぱりアウトプットって重要。
その他、メディア掲載
Sansanのスーパーコネクタ・日比谷さんとのご縁もあり、マイナビさんのインタビューに。
番外編:You are what you eat :-)
名古屋にて
下北沢にて
松山にて
ハリウッドにて
シアトルにて
「学びたい」と「出会いたい」の両立を高知で! -- コミュニティリーダーズサミットやります
先日、ある方々との会合で、”イベント参加のモチベーションは「学びたい」か「出会いたい」のどちらかだ”、という話を聞いてすごく腹落ちしたので、そのフレーズをFacebookに投稿したところ、写真無し、背景無しのテキスト投稿だったにもかかわらず結構な数のLIKEが。
これだけ多くの人が納得できるということは、やはりこれは本質なんだなと思いました。で、この二つを両立するイベントを高知で開催しようとしているので、今日はそれについて書いてみます。
「学びたい」と「出会いたい」を両立するのがコミュニティ
よくイベントとコミュニティの違いについて話すことがあるんですが、この「学びたい」と「出会いたい」の両立度合が高くなると、コミュニティ的要素が増えていくように思います。単発イベントであれば、「学びたい」と「出会いたい」のどちらか一方だけでも十分成り立つと思いますが、逆にいうと、コミュニティを形作るイベントにはこの両方の要素が必要だな、と。
で、まさに今高知県といっしょに企画しているイベントが、この「学びたい」と「出会いたい」の両立を目指しています。つまりイベントが目的ではなく、このイベントをきっかけにコミュニティ的なうねりを作ることを目指しているわけです。
この動きのきっかけになったのは、高知県知事である尾崎知事との面談。
昨年の9月だったんですが、とあるイベントで直接面談の機会があり、それがきっかけで高知県主催の「コミュニティ」イベントを開催する流れになりました。が、自分の考えるスピードと、県庁のスピードとのギャップ、更に「コミュニティ」という、まだまだ人によって概念や期待値の異なる器をキーにした活動で、足並みをそろえることの難しさなどもあり、思いのほか時間がかかったのも事実。で、ようやく来月、5月19日(土)に開催できる運びとなったわけです。
なぜ高知で開催?
東京と一部都市を除き、ほとんどの自治体が人口減少(というより急減)に伴う、地場経済圏の縮小に直面しています。人口減少自体はもはやなかなか流れが変えられないとことろまで来ているわけで、これを認めたうえでどう生き残りを図るか、の戦略を考える必要があります。よくある産業振興策では、補助金による企業誘致等を行うわけですが、はっきり言って誰もが(どの自治体も)取り得る施策で、高知県が上位のポジションを取るのは、経済的にも、そして地理的にも(LCCさえ飛んでいない)かなり無理スジだと言わざるを得ません。
では、何を軸にこれからの生き残り、そして成長戦略を考えるか? それには尾崎知事が就任当初から言っている「地産外商」の徹底、で、それを実践するには「外のモノサシ」を知る人材が必要なわけです。地産外商はもともとは一次産業を強く意識したものだと思いますが、ここではITやコンテンツ系でのビジネスも含めています。クラウド時代、理屈的にはどこで起業しても、どこで働いても、日本中、いや世界中を相手に仕事ができるはずですが、現実問題としてはそうなっていません。相変わらず多くの起業が東京中心に行われるのは、そこに経済や技術のトレンド、世界のマーケットを知る人材とネットワークが(結果的に経済も)集積しているから、です。
コミュニティを通して「外のモノサシ」を知り、行動変容を促す
では、その集積した人材やネットワークを、どう高知の既存産業やIT産業に実装していくか? それには「コミュニティ」の力無くしてはできないと考えます。コミュニティを通じて、様々な「外のモノサシ」を促成栽培的に知ることができますし、単に知るだけでなく、実践している人と一緒に話したり考えたりすることで行動変容も起こしやすいはずです。
地方において、「コミュニティ」と「外のモノサシ」が重要な理由については、なんどもお話ししているので、こちらのスライドもぜひご参照を。
いろんな自己啓発セミナーや、経済振興セミナーなどが地方でも開催されますが、はっきり言って知識だけでは行動につながらないことが多いのが事実。最近話題になっているこの図が、端的に表していますね。
行動変容につながるのは、実際に行動している人と一緒に活動することが一番効果があるわけです。で、特定のテーマや課題で「行動している」人の集団がコミュニティ、なので、高知でムーブメントを起こすうえでは、コミュニティとの接点が発火点になるのは必然だといえます。
イメージは幕末志士
なので、今回のイベントではコミュニティの中でも、特にITと一次産業周りに近しいエリア(人によってはこの両方を手掛けている人も)から、リーダー的な存在の人たちや、コミュニティを通じて、「外のモノサシ」を知り世界が広がったという、これから行動を起こしたい人にとってロールモデルとなる方々にお集まりいただき、お話をいただくイベントになっています。もちろん、単に「聞くだけ」の場にはならず、皆でワークショップをしたり、ネットワーキングの時間も十分に取っていますので、参加者の皆さんにとって「自分ゴト」になる場を目指しています。
イベントの立て付け的には高知県の人向けのように見えるかもしれませんが、全国からコミュニティリーダーやコントリビューターの方にお集まりいただき、他にはないコミュニティのハブ的なポジションを提供したいと思っています。なので、コミュニティに参加している全国の方にも楽しんでいただける場になるかと。
登壇者の方々のイメージは、私のなかでは幕末志士です。「藩」という既成概念を超えて駆け抜けた人たちと、この平成末期にコミュニティを通じて社会にインパクトを与えようとしている人たちは私の中ではダブって見えるわけです。
この写真と現在で一つ大きな違いがあるとしたら、女性の比率が高いことですね。今回のスピーカーや参加者に多くの女性の方がいらっしゃるので、女性の方にもぜひご参加いただきたいと思っています。
ちなみに今回の登壇者の皆さまはこちら(4月15日現在)。友岡さんの写真とか、まさに幕末志士ですね。
- 友岡賢二さん(フジテック株式会社 常務執行役員 情報システム部長)
- 金春利幸さん(アールスリーインスティテュート Chief Innovation Officer)
- 坂上北斗さん(ウェブクリエイターズ高知 代表 / メディア・エーシー Webマーケティング部 マネジャー)
- 八子知礼さん(株式会社ウフル 上専務執行役員IoTイノベーションセンター長)
- 大関興治さん(ブエナピンタ 代表取締役/ THE NARUTO BASE)
- 村岡浩二さん(一平 代表取締役)
- 原謙太郎さん(ヤッホーブルーイング よなよなエール広め隊 ユニットディレクター)
- 田名辺健人さん(北海道の楽しい100人/半農半IT事業者)
- 北川佳奈さん(JAWS-UG神戸/関西大学)
- 四宮琴絵さん(地域クラウド交流会/ジョイゾー)
- 藤崎優さん(マイソースファクトリー/オルターブース)
- 中山亜子さん(リモートワークジャーニー/ネオラボ)
初ガツオの季節です
最後に大事なお知らせを。なぜこの時期に開催するかといえば、それは初ガツオの時期だから、です。せっかく高知にいらっしゃるので、それに一番良い季節を選んだつもりです。懇親会でも、カツオのたたきや、それに合うクラフトビールの提案(by ヤッホーブルーイングさん)等、色々と趣向を凝らしていますし、街なかでも沢山のお店で楽しめる季節。ぜひ多くの方にお越しいただければと思っています!
AIは自動運転の夢を見るか? -- やっぱり自動運転は普及すると思う理由
先週は、NVIDIA主催のGTC (GPU Technology Conference) 2018に出展のため、San Joseに行ってました。Adobe時代は割と頻度高くSan Jose詣でしていたのですが、気が付けば10年ぶり位の訪問。久々のSan Jose(+LA、Seattle滞在)で感じたことと、昨今の自動運転車の事故の報道、そのうえでGTCで華々しくアナウンスされた自動運転の未来像を見て、「不可避な」流れを確信した部分があるので、ブログにまとめておきます。
10年の変化 -- レンタカー不要な時代に
San Joseといえば、ダウンタウンにショッピングモールや気の利いた飲食店が少なく、クルマ移動が必須なエリア、です。で、10年以上前にAdobeのHQに行くたびに手配していたのが「レンタカー」。日中はほぼミーティングなので、乗っていない時間も多いわけですが、空港ーホテル間や、お店への移動のみならず、特にダウンタウンから離れたお店から帰ってくることを考えると、タクシーは結構捕まえるのが大変+当時はメーターをちゃんと倒してもらうのにも気を遣う必要アリだったので、レンタカーが現実的なソリューションだったわけです。が、レンタカー手配、費用(保険も入れると結構高くつく)、駐車場のない飲食店でのパーキング確保、プラス運転者はお酒が飲めない、などネガティブファクターも多かったのも事実。
今回のSan Jose出張では、もちろんレンタカーの手配はしていません。なにせ、時代はライドシェア。タクシーとレンタカーのネガをすべて払しょく(特にアプリでの場所指定、事前決済はスバラシイUX)するUBETやLyft(私は宗教上の理由でLyftを多用(笑))を使うことで、今回のSan Joseはとても快適に過ごせました。
カンファレンス会場、ホテル、NVIDIA本社を行き来するのも、ほぼ10分~15分ほど時間を見ておけば移動が完了、支払い+レシート取得もサイフを出すまでもない、とストレスレスです。ドライバー側もアプリの指示に従うだけでいいので、普通のタクシーよりストレス少ないのでは? と想像します。(自分でもできそうな気がする)
下の写真はSJCのもの。空港にも、App-base Rideshare 専用の乗り場の設置が多くなりましたね。
移動したい人 > 運転したい人
私自身は運転が好きな部類ですが、考えてみると日本でも家人に駅まで送ってもらったり、都内でのタクシー移動など、クルマに乗っている時間の多くが運転者側ではなく、乗車側の立場だということに気づかされます。(一方、バイクに乗っての移動は結構積極的にしているのですが、都内は駐輪場問題があり。。。 これについては、また別のブログに書きます)
つまり、誰かが運転してくれればいいわけです。そうすればバスや鉄道にはない「Door to Door」のクルマのメリットを享受できる。クルマ社会のアメリカに出張していると、この「誰かが運転してくれる」ことに対するニーズはすごく高いと感じます。で、これは産業界にも大きな影響がありますよね。トラック、バスといった定期ルートを走る移動体は、結構な比率で自動運転化できるのでは? と。特にSeattleはトロリーバスが数多く走っているのですが、これは架線の設置で移動範囲が完全に決まってますからね。この範囲だけきちんとAIが認識できれば、技術的には行けそう。あとは、社会的なコンセンサスとコスト、ということになります。
まずは産業用無人機(UGV)と、アーリーアダプター向けの高級車から
技術の普及については、クラウドの例を見るまでもなく、コストは重要な観点です。初期にこのコストを負担して普及促進してくれる「顧客」が必要です。で、適用技術を理解しなくても、便利と感じるパッケージになっていれば、利用者が増える=>コストが低減する => 更に技術に投資が進む、というサイクルが生まれます。これを大規模に進められるのが産業用の無人車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)と富裕層向け高級車ではないかと思います。
GTC 2018会場にもそれをUGVの未来を示唆する一台が。荷物さえ運べれば良い、ということになり効率を追求するとこういうカタチになりそうです。
更に、ドローンと組み合わせると、エリア間の移動はUGV、エリア内はドローンという仕組みもいけそう。これはAmazonが出している特許のようですが、合理的ですよね。
Amazonが次々とドローン関連特許を出して公開へつながってる。今回は、人の音声とジェスチャーでドローンが認識するシステム。狭域エリアまでトラックで🚚荷物配送して、エリア内戸別宅配はドローンがトラックから離... #NewsPicks https://t.co/sK7EIqAg0I
— 千葉功太郎 (@chibakotaro) 2018年3月31日
ちなみに、同じUGVでもこれはやりすぎかな (笑)
高級車でいうと、San Joseのみならず、LA、Seattleでも結構テスラが走っていますが、このテスラの躍進も自動運転普及に向けて大きなカギになっていると思います。
要はポートフォリオ。完全自動運転でなくてもメリット大
では、実際のところ自動運転はどこまで来ているのか? 前述した通り、テスラに乗っている人を沢山みましたが、私が見かける街中(特に交差点)ではハンドルを握っているドライバーがほぼ100%で、交差点の多い街中では、完全自動運転はまだまだ先の状況かなと思います。
GTC直前にニュースになった自動運転車の事故の報道とかをみても、社会的コンセンサスを得るにはまだ時間がかかるかもしれません。
ですが、先のAmazonの特許にあるようなドローンとの組み合わせも含め、全てを自動運転技術に頼らなくても良いとなれば、そのほうが普及も早いし、コストも安くすむかと。たとえば高速道路、幹線道路、及び自宅の車庫入れや出先でのパーキングへの出し入れだけクルマ側でやってくれれば、混雑する街なかや、自動運転の要件が揃わないエリアでは人間が運転しても疲労度は全然違いますよね。 GTCで発表されたTRI(Toyota Reserch Instistute)のセッションでは、自動運転を「ガーディアン」と「ショウファー」の二つのモードに分類して研究を進めているとのこと。
2つのモードのうち、ひとつは「ガーディアン」(Guardian)で、もうひとつは「ショウファー」(Chauffeur)です。
ショウファーは皆さんが思うような自動運転の形です。人間の代わりになって完全に自動で運転するものです。これが最終的な目標ではあるのですが、実はいま面白いのはガーディアンの方です。私たちはこの技術を通じて、常に人が運転するのを監視し、必要な時にだけ介入(関わる)という技術です。潜在的に潜んでいるクルマの衝突や事故の可能性から守るためのしくみです。
ショウファーは、車が運転しますから車に責任があるわけですが、ガーディアンはドライバーが運転してドライバーに責任があるとされつつも、AIがその手助けをするということです。
引用元の記事はコチラ。インフラではAWSのGPUインスタンス(P3)とFPGAインスタンス(F1)が頑張っているようです。
「ガーディアン」機能が進むだけでも、メリットのある業界は多いかと。例えば、運送業では、ドライバーが「運転+配達作業+運行管理」のマルチタスク作業から少しでも解消される事になるでしょう。GTC会場にあったこのトレーラーもそんな近未来を示唆する一台。
自動運転が普及する理由:そこにニーズがあるから
今回、確信したのは技術的背景もさることながら、自動運転(ガーディアン型含む)へのニーズが大きいことをアメリカで実感したからです。で、これは日本でも同じことが言えますね。例えば、自動運転技術でドライバー側の負担が減れば、ライドシェアにクルマと自分の時間を提供する人も増えるかと。東京だと移動手段にこまることはない(渋滞、混雑には困りますが)ですが、地方都市にいくとクルマがないと買い物一つできないエリアも多々あるわけで、これが高齢者がいつまでも運転をし続けなければならない背景にもなっています。自動運転やライドシェアが高齢者のDoor to Doorの移動をカバーすれば、もっと住みやすい環境になりますね。画像認識+AI+移動体制御技術が一定レベルに達すれば、年齢やその日の体調でスキルが変動する人間が運転するよりも、よっぽど安全かもしれません。なので、この自動運転やUGVに対するニーズが増大するのは「不可避な」流れだと思います。自動運転技術がない移動体は、今後マイノリティになっていくはずなので、自動車メーカーのみならず、他業種からも、この「自動運転」市場に更なる参入=競争激化で、イノベーションが進むことになりそうです。先頭を走るのは、いろんな環境を考えると米国と中国、かな。内燃機関の自動車メーカーの多い日本ですが、官民ともにこのゲームチェンジにどのように対応するのか、気になるところです。
パラレルキャリア月報 -- Feb 2018
今回も遅れがちな月報、2018年2月分をお送りします。今回も例によって、社内打ち合わせやクローズドなセッションは抜いています。
サマリー
2月はイベント月間でした。ハイライトはこの半年くらい時間をかけてきたABEJA SIX 2018 (2/22)の開催ですね。ABEJAのマーケティングチームはじめ、社内のメンバーが一丸になったイベントでした。スタートアップが初めて開催するイベントで、エントリーが3,000名超、ハコに入らないので泣く泣く半分ほどの数(約1,600名)に抽選でセレクションして、当日は1,000名近いお客様に来ていただけたのは、かなり大きな一歩になったと思ってます。
それにしても、あれだけのタスクをやり切ったチームはスバラシイですね。ただし、タスク管理ツールは入れたほうがいいかも(笑)。
あと、自分は登壇側にいなかったですが、ヌーラボのBacklog World(2/18)も手作り感ありつつも、熱量の高いイベントでしたね。こちらの参加者数は200弱だと思いますが、ツイートの総数がとても多く、ユーザーに愛されている製品なんだなと改めて思った次第。
ちなみにBacklog Worldで登壇されたヤッホーブルーイングの原さんとお話しできたのがご縁で、5月19日に高知で開催を企画しているコミュニティリーダーズサミットin高知(仮)にご参加いただけるようになったのも良かったです。
話題の高校生起業家 ワンフィナンシャルのCEO 山内さんと「キャッシュレスへの不可避な流れ」について対談したInevitable ja Night #3(2/16)もインパクトのある場でした。なにせ自分のムスコと同じ年の人との対談ですからね。世代交代の波が着実に来ているのを感じざるを得ません(笑)。
あとは話題のAmazonGoが一般利用者向けにも開放されたのを受けて、弾丸ぼっちツアーでシアトルまで行ってきました。こちらの内容をまとめたブログは、タイムリーな話題だったこともあって自分のブログ史上最大のアクセスに。(ちなみに、今日もこれからAmazonGo & Amazon Booksに行ってきます)
登壇ログ
2月の登壇ログはコチラ。
DevRel Meetup Tokyo #27 (2/6) [Stripe]
DevRel Meetup には2回目の登壇。今回は、コミュニティマネジメントとコミュニティマーケティングの違い、を軸に企業系コミュニティの作り方についてご紹介しました。
App Ape Award (2/7) [Still Day One]
フラーさん主催のApp Ape Award で、クラウド以降の技術トレンドとエコシステムの重要性についてお話させていただきました。私がここ最近よくお話しをする「テクノロジーの不可避な流れ」と「コミュニティが持つ力」についての複合的な内容になっています。書き起こしもこちらに。
1年間にアプリがDLされる回数は820億回以上 スマホ黄金時代を生み出した「エコシステムの連鎖」とは何か? - ログミー
Alexa Day (2/11)[Still Day One]
Amazon在籍時代から注目のAlexaのイベントがついにコミュニティイベントで開催。それも東京から離れた神戸の地で300人も集まるという盛況ぶり。私もパネルディスカッションで登壇させていただきました。この内容はブログでもまとめたので詳細はコチラを。
Inevitable ja Night #3 キャッシュレスへの不可避な流れ (2/16) [Still Day One]
Googleさんの支援で開催してる Inevitable ja Night シリーズの第三弾。今回は「キャッシュレス」をテーマに開催。私の登壇も含め、各セッション内容はこちらに書き起こしが上がっているので、ぜひご覧を。
先日の #inevitableja night vol.3 「キャッシュレスへの不可避な流れ」の各セッションがログミーの書き起こしに。 #JP_Stripes な皆さんもぜひご一読を。https://t.co/o81UUpHjNm
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月29日
ABEJA SIX 2018(2/22) [ABEJA]
SIXでは私も登壇機会がありました。パルコ・執行役の林さん、トレッサ横浜・プレジデントの栗原さんと一緒に、大規模商業施設で起こっている顧客行動の把握についてパネルでお話しさせていただきました。AmazonGoでも同じ動きがありますが、「ECのあたりまえ」を店舗に持ち込む動きが国内でも活発になってきています。
その他、メディア掲載
番外編 You are what you eat :-)
シアトルにて
AmazonGOにて
Backlog Worldにて
神戸にて
新橋にて
日本の中心で、AIを叫ぶ
はい、タイトルは完全にアレですが日本の中心=中京エリアでAIのミートアップと事例取材に参加してすごく手ごたえがあったので、そのあたりを書いてみます。
東京での活動が、名古屋にも飛び火。
昨年からABEJAで開催をサポートしているABEJA Cloud AI Night というAIに関するミートアップがあるのですが、これまでは東京のみの開催でした。
過去、東京のミートアップに参加いただいた西川コミュニケーションズ(略称:nico)の方が、同じようなミートアップを名古屋でも開催したい、ということで場所の提供含めホストしていただきました。nicoでは、会社としても最近JDLA(日本ディープラーニング協会)にも参画するなど、AI、特にディープラーニングへの取り組みを強めているところです。
名古屋初のミートアップに多くの方が参加
これまでの名古屋での勉強会やコミュニティイベントでの経験から、実はキックオフにそんなに人が集まるとは期待していなかったのですが、当日会場にうかがってみると40人ほど入る会場がほぼ満席という状況。
本日は名古屋の西川コミュニケーションズさまとABEJA Cloud AI Nightを開催しています。
— 株式会社ABEJA (@ABEJA_Inc) 2018年3月20日
会場ぎっしりご参加いただいてます!#abejaaihttps://t.co/kJqI2G8b28 pic.twitter.com/cHFRkSY6x5
スピーカーもAbeja側だけでなく、ABEJA SIXでも登壇いただいたトライエッティングさんやnicoさんをはじめ、ほぼ地元スピーカーが占めるという理想的な構成です。
私からは、前日開催されたABEJA SIX 2018のre:Cap的な内容をお話ししたあと、
今宵は名古屋で Here We Go!! #abejaai pic.twitter.com/EQifDNrBYq
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月20日
トライエッティングさんによるAIプロジェクト導入のポイントについての、とても分かりやすいお話をしていただきました。ポイントは以下の3つにあるとのこと。
1)目的・ゴール設定をすること
2)データの本質を知ること
3)モデル構築の”後”を考えること
質問も多数でていたので、参加されていた方にとって知りたい話だったのだと思います。
トライエッティングさんへの質問タイム #abejaai pic.twitter.com/CRFJTRN5ij
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月20日
会場をホストしていただいたnicoさんからは、JDLAのG検定を受けたお話し。これも、AIに興味ある方が、「次の一歩」としてトライできるいいお話でした。来場者の方の中でも、「次回受けみたい」という声が多かったですね。
そうそう、懇親会も名古屋色の強いものでしたよ。
世界よ、これが名古屋の懇親会だ! #abejaai pic.twitter.com/Zt2Vj5Rc0y
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月20日
なぜ、多くの人の参加があったのか?
これまで、自分が関係してきたWeb系の技術やクラウド技術は、比較的慎重な企業が多い名古屋の地元大手には浸透に時間もかかり、勉強会やミートアップでも参加人数が初めから多いということはなかったように思います。結果として、東京以外だと、大阪や福岡で地方開催が始まることが多かったのですが、それが今回のAIミートアップは名古屋からスタートしたというのも異例ですね。思うに、今回のテーマである「AI」「ディープラーニング」の会合に初回から多くの人が(それも、スーツ比率高し!)来ているのは、自動運転やRPA、故障予測等、製造業が多い地場企業にとって既に関心が高い(プロジェクトも既に進行中)エリアだということがあると思います。
なので、これからも多くの方が参加いただけることは間違いないでしょうね。今から、2回目の会合が楽しみです。
武蔵精密工業でのディープラーニング導入現場に潜入
名古屋でのミートアップの翌日は祝日(春分の日)だったのですが、早起きして豊橋へ移動。久々の名鉄です。
いざ、豊橋へ (ABEJA事例取材) #abejaai pic.twitter.com/zcy2b9r75K
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月20日
ここから豊鉄。 #abejaai #事例取材 pic.twitter.com/hiHfathuTU
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月20日
菜の花が咲くエリアを抜けて、目的地である武蔵精密工業(株)へ。こちらでは、ABEJA SIXでもお話いただいたディープラーニングの導入事例を、実際に工場で見学させていただくことになっていました。ちなみに自動車業界って、世間の休みの体系とはちょっと違うんですね。この日も休日でしたが完全に通常操業モード。応接室に入ると、工場に入るための制服が用意されていました。
工場に潜入 #abejaai pic.twitter.com/orjIfudw6L
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月21日
工場内は、すごく自動化されていますが、ラインの終端である検品の部分は比較的人が多く配置されています。現在、ディープラーニング導入を検証しているのはこの検品部分をどう自動化するか、というところですね。そのためには単にディープラーニングによる画像認識で不良品を見つけるだけでなく、その指示をロボットに伝えて「時間内に」素早く作業をさせなければいけないわけで、ロボットの操作プログラムを内製してきた武蔵精密工業さんならではのノウハウが生きているところだと思いました。エッジ部分にはNVIDIA Jetsonも導入済。
エッジ側にはNVIDIA Jetson #abejaai pic.twitter.com/fWodVIeIDq
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月21日
実際テスト中のラインを見せていただきましたが、画像認識+ロボット操作+ネットワーク統合など、かなり総合格闘技的なスキルと「すり合わせ」ができる組織体制が必要なエリアだと実感しました。
AI工程 #abejaai pic.twitter.com/xVAu9paI2A
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年3月21日
同じようなことを考えている製造業の方は、まずこの武蔵精密工業さんの社内体制等を参考にするといいと思います。
武蔵精密工業さんのABEJA SIXでのプレゼン資料も、こちらのサイトで公開されていますので、この分野に興味のある方はぜひご一読を。
そして世界へ
その武蔵精密工業さんのディープラーニング担当チームですが、今週は米国・サンノゼで開催中のAI・ディープラーニングでは世界最大規模のカンファレンスであるGTC (GPU Technoloy Conference) 2018 に参加されています。私もこちらの会場に来ているのですが、精力的に会場を回ってらっしゃる姿を何度もお見掛けしました。やはり自ら最新の情報を取りに行くこの姿勢が、素早いディープラーニング実装を実現しているんだと思います。
尚、GTC2018 会期中に、ABEJA Cloud AI Night を現地で開催予定です。現地時間で、3月28日の夜開催ですので、もしGTC 2018に来られている方がいらっしゃれば、ぜひご参加を。NVIDIA、AWS、Googleといった、ディープラーニングの実装に欠かせない企業の方々をはじめ、日本企業の参加者の方も多数参加されますので、ネットワーキングの場としても良いかと。まだまだ新しい分野ですので、成功事例、失敗事例などを共有しながら進んでいくコミュニティができればと思っています。
パラレルキャリア月報 - Jan 2018
今回はものすごく遅いアップデートとなりました。2018年1月の活動月報です。例によって、社内打ち合わせやクローズドなセッションは抜いています。
サマリー
1月はなんと読売新聞に「働き方改革」のモデルとして取材記事が掲載されることになりました。それだけ「パラレルキャリア」が一般に浸透してきたんですかね。
今日の読売新聞朝刊でパラレルキャリア実践者として紹介されました。 使われた写真はパラキャリ先のヌーラボでの一枚。#パラキャリ #ヌーラボ #Nulab pic.twitter.com/ORkVQQ38RV
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年1月20日
提唱してきた「コミュニティマーケティング」についても、1月は高知と札幌の2都市での開催と、東京以外にも確実に拡がってきている感がありますね。もちろん、毎回100名近い参加者がある東京と比べると参加者数は異なります(15~20名)が、コミュニティ活用を自分ゴトとして捉えている人の比率が高いためか、熱量が高いように感じますね。
写真は高知でのCMC_Meetup での集合写真。IT系の参加者のみならず、一次産業に近い方や県庁職員や佐川町の町長さんも参加いただくなど、幅広い参加をいただけました。いわゆる「課題先進県」が、より多くの分野でコミュニティの力を必要しているということでしょうし、ホントの意味で官民一体となった活動もできそうな気がしましたね。
あと、福岡出張の際に、1日offで韓国・釜山まで日帰り弾丸ツアー(福岡→釜山→福岡、でその日のうちに東京まで帰還)をしてきましたよ。港町・釜山、よかったです。
あと、昨年いろいろお世話になったサンリオさんで、ついにフルVRなサイトがオープン。今後はこうしたサイト構築も増えてくるかもですね!
昨年よりいろいろとVRにトライを続けているサンリオピューロランドさんから、新たにフル「WebVR」サイトが! これは新しい体験ですねー。https://t.co/4WifxvrD3H pic.twitter.com/wk0btWEAVc
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年1月26日
登壇ログ
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JP_Stripes 広島キックオフ(1/12) [Stripe]
中国地方で初のJP_Stripes 開催! 広島移動の飛行機がディレイ&空港バスが高速の事故渋滞に巻き込まれるなどで、開始5分前に会場到着というギリな行程。
はじめての開催ですが、出席率ほぼ100%で満員御礼となりました。アクセシビリティとStripe実装についてのLTが印象的でした。次回はハンズオン希望の方も多く、実践的な雰囲気でしたね。
JP_Stripes 福岡 Vol.2 (1/16) [Stripe]
福岡では2回目の開催となりました。今回はShopifyさんもごいっしょいただき、EC回りをやってらっしゃる方の参加も多め。また、JP_Stripes 福岡の運営メンバーの方が「仮想壺」をサブスクリプション課金するデモをStripeで実装してきてくれていて、定期課金モデルの作り方をわかりやすく紹介いただいたのが印象的でした。
当日の模様はコチラのツイートまとめでも。
私の紹介スライドはコチラに。
CMC_Meetup 高知 キックオフ (1/18) [CMC_Meetup]
地元高知での初開催となる。CMC_Meetup! 前述のとおり幅広い層からご参加いただき、熱量高かったです。GW前後に、第2回目をやりたいですね。
当日の資料はコチラ。
コミュニティ談義は遅くまで続きました。
Rd.2!! #cmc_meetup pic.twitter.com/aNcSupUfDT
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年1月18日
高知県コンテンツビジネス起業研究会(1/19) [Still Day One]
高知県主催の企業家向けセッションでの「外のモノサシ」バナシをしてきました。
懇親会では、久々に高知流の呑み(ジョッキ酔鯨・冷)の洗礼を。
CMC_Meetup サッポロ キックオフ (1/26) [CMC_Meetup]
札幌での初CMC_Meetup! こちらの参加者はIT系の方が主体だったのですが、皆さん地元で各コミュニティを引っ張る「ファーストピン」な方々だったので、理解も深かったですし、「悩み」も深かったですね。こちらも近いうちに2回目の開催ができればと。
そういえば、札幌ではこのような「ビックフット」系の自転車を沢山見かけました。このタイヤなら雪道もいけるのかな?
その他、メディアでの露出
前述の読売新聞での掲載と同じ内容ですが、英字新聞版でも掲載に。こちらはWebでも(読売新聞の記事はWeb版なし)掲載となりました。
URLはココなんですが、30日以上たった記事は削除されるんですかねー。アクセスできなくなっていました。残念。
http://the-japan-news.com/news/article/0004198188
番外編:You are what you eat :-)
広島、高知、福岡、札幌と行ったので、美味しいものには事欠きませんでした。もちろん、はじめての釜山も良かったです!
羽田にて
広島にて(うえの)
広島にて(宮島ブルワリー)
福岡にて(博多一幸舎)
土佐にて(萩の茶屋)
土佐の海賊焼。 pic.twitter.com/MUWumhvvFn
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年1月20日
高知にて(いまどき兵衛)
札幌にて(大公)
釜山にて(松亭3代クッパ)
「アレクサ、エコシステムを作って!」-- Alexa Day 2018 参戦記
おそらく日本では初めての、アレクサのユーザー、デベロッパーによる大規模カンファレンス Alexa Day 2018 が2月11日(3連休の中日)に神戸市で開催されました。
私もこちらに登壇枠をいただいたので、東京からシアトルのコンビニに立ち寄って(笑)で参加してきました。
これは「コミュニティ主導」による、VUI(ボイス・ユーザー・インターフェース)のビジネスエコシステムが日本で大きく動き出したことを示す象徴的なカンファレンスだったの思うので、まとめてみます。
そもそも、アレクサ(Alexa)って何? という方はまずは、こちらの記事をご一読いただいてから進んでください。
地方/有料/コミュニティ主催で、300人来場と1,000を超えるツイート
まずこの事実がスバラシイですね。こうした大き目のユーザーカンファレンスは、人が集まりやすい東京周辺や、メーカーからある程度のサポートを得ながら実施されることが多いと思います。今回のカンファレンスは完全にこのパターンの逆を行っています。
- 東京開催 → 地方開催
- メーカーサポート → ユーザーコミュニティが100%運営(アマゾンはスポンサーにもいなかったはず)
- 無料 → 有料イベント(当日:3,000円 ※営利目的ではなく会場費や印刷費等のコストへの充当用)
更に開催日は3連休の中日、とふらっと参加するにはハードルが高い要素が揃っていましたが、それにも関わらず神戸に300人以上の人が集まってのカンファレンス開催。もし、東京開催でメーカーサポートも(告知や運営で)それなりに受けていたら、おそらく800~1,000人位集めることも可能だったと思います。今回の300人の参加はそれぐらいのインパクトがあると考えてよいと思います。
「ファーストピン」の集まりならではの熱量の高さ
セッション内容もパルコさんや大手SIによる金融機関向けの事例に始まり、自作Echo(kokexa)を作った個人デベロッパーの例やCerevo岩佐さんによるアレクサ(AVS)家電のお話し(家電メーカーの方必見の内容でした)など、カバレッジも広く、クオリティも高いものでした。
セッションだけでなく、参加者からの質問やコメントも多く、ツイート量は1,000を超える数字に。
実は、この「熱量の高さ」は、上記の3つのブロッカー(地方開催、メーカーサポート無し、有料)があったからこそ、醸成できたのではと思っています。東京で開催される無料イベントで、話題のアレクサがテーマであれば、大量の(私がワナビーズとよぶ)「クレクレ君」を呼び寄せてしまい、この熱気にはつながらなかったかもしれません。神戸への交通費、宿泊費をモノともせず(私ももちろん車代とか講演料とかいただいていません)、3連休の中日に参加という難易度の高い家庭内稟議を通し、アマゾンの出荷ポリシー(抽選制)によってまだ手元にEchoがない人が多いという壁の高さにもかかわらず、VUIの将来性=ビジネス性と、純粋にアレクサのテクノロジーとしての面白さにひかれて集まった人たち=ファーストピン(後述)だったからこそ、ノイズが少なくインプット、アウトプットを楽しめる場として機能したのではないかと思います。
コミュニティ拡大はたき火の熾し方に似ている
私はこうしたコミュニティが持つ熱量の拡大のステップを、たき火の育て方に例えて話すことがあります。ようやく火が付いた種火に供給しなければいけないのは、すぐに一緒に燃えることができる木(よくかわいた木、枯れ枝など)であり、間違っても乾いていない生木や草を投入してダメですよね。コミュニティの種火を「ロールモデル」だとすると、よく燃える乾いた木は「フォロワー」であり、投入するとケムリにしかならず火を消してしまう生木や草やクレクレ君=「ワナビーズ」というわけです。今回は種火と枯れた木がいいバランスで集まったことで、大きなたき火に成長した、というふうに見ることができます。
このロールモデルやフォロワーの方々が、コミュニティ拡大のカギとなります。よく私がコミュニティマーケティングでお話する Sell through the community モデルをボーリングに例えた時の「ファーストピン」となるわけです。
エコシステムの重要性
今回のAlexa Day 2018での私の登壇枠はパネルディスカッションでした。この中で「VUI関連のビジネスでは誰と組むべきか?」というお題がありました。私は以下のように答えました
- 新しい技術やビジネスの立ち上がり時期は、誰が適切な相手かは「看板」や「資格」で判断できないので難しい=既存の方法ではマッチングしづらい
- 一番いいマッチングシステムは、コミュニティ。初期にコミュニティに参加している人、企業はマッチング対象となりうる
- コミュニティで良いアウトプット(発表、デモ、情報公開)をしていると、マッチング相手から見つけられやすい
- このマッチングシステムの参加者が多いほど、よりニーズにあったマッチングが成立=コミュニティの大きさが、マッチングを加速
つまり、この当日参加している人や企業の中に、マッチング相手はいるし、こうしたコミュニティ、エコシステムがない技術や製品はマッチングが難しい=ビジネスの立ち上がりが遅い、ということになります。
このやりとりを現場で聞いていた、某東証一部上場企業CIOの方のツイートがこちら
誰と組むか。今日のこのイベントに来ていない会社とは組んでは行けない。 #alexaday2018
— 友岡 賢二(Kenji Tomooka) (@TomookaKenji) 2018年2月11日
ところでアレクサってそんなにいいの?
パネルでは「VUIは今後来るか?(ビジネスになるか?)」というお題もありました。私を含めた3人のパネリストは全員「間違いなく来る」と回答、もっというと3人とも「7-8年前に、あんなもの使えないという評価をされがちだったクラウドの立ち上げ期に似ている」という意味のコメントをしました。そう、クラウド以降の流れを見るとAIが絡んだVUIが普及するのは不可避な流れだと思っているのです。
なぜ、VUIが来ると思っているのか、私の理由は以下の三つです
- 「自然」に使える:よくよく普段の生活を振り返ると、音声で何かを頼む(今は頼む相手が人間であることが多いですが)シーンがすごく多いですよね。むしろキーボードでしか入力できないシーンのほうが不自然とも言えます。キーボードフリーになると、ITリテラシーに関係なく、子供やキーボードに馴染みのない高齢者などの入力も受けられるようになるので、入力対象者がグッと広がることになります。「バリアフリー」的にもイイですね。
- 「ながら」が可能:音声インターフェースはながら作業に向いています。料理をしながら、PCで作業をしながら、運転をしながら、機械の修理をしながら、などいわゆる手がふさがっている状態で利用できるという利便性だけでなく、何かの作業中でも「使ってもらえる」というのは大きなアドバンテージです。今、様々メディアやガジェットが24時間しかない人の時間の奪い合い(シェアの取り合い)をしているわけですが、VUIであれ他のものに時間を取られているところにもスッと入り込むことができます。時間の奪い合いの観点からすると、これは大きなアドバンテージです。
- AIの「学習データ」としての価値:今、AIをめぐるプラットフォーム争いが激しくなっています。ここでこぞってプラットフォーマーが注目しているのが、AIを教育するための「データ」です。以前は、グーグルが「検索エンジン」という圧倒的なテキストデータを吸い上げる仕組みを使って優位に立っていましたが、取集データの範囲はテキストだけでなく、画像や映像へ広がり、それが音声にも広がっているのが現状です。なので、アマゾンのみならず、グーグル、マイクロソフト、アップルといったグローバルプラットフォーマーがどんどん「AIスピーカー」的な仕組みを出してきています。この世界的な投資が、VUIの新しい使い方を生み出し、普及が加速していくと思われます
ここまではVUIが今後来る! と私が確信している理由ですが、ではそのなかでなぜアマゾンのアレクサが優位と思っているか? それは前述した「エコシステム」をアレクサがいち早く構築しているからです。米国でのアレクサのエコシステムの大きさは、既に様々なメディアで伝えられている通りですが、日本でも言語対応やスピーカー発売でLINE、グーグルの後発(まだ出荷調整中ですし)であるにも関わらず、こうしたコミュニティのうねりがいち早くみられるというのは、現時点で競争優位になっているといえるのではないでしょうか?
What’s next?
今回のイベント主催側には、実は「アレクサユーザーグループ」的な名前のコミュニティは存在していません。アマゾンのクラウドサービス AWSのユーザーコミュニティである JAWS-UG のメンバーのなかで、このアレクサに可能性を感じた人や、既にビジネスとして取り組んでいる人たち(この日本最大のクラウドユーザーコミュニティ:JAWS-UGがアレクサのコミュニティの母体にある、というのは日本では大きな強みとなっているわけです)が中心メンバーとなっています。普段の勉強会や情報共有を通じてアレクサに関する情報を過去1年以上発信し続け、特に発信の多かったJAWS-UG神戸に所属する人たちが中心になって、今回のイベントの企画を立ち上げ、そこに全国のJAWS-UGの有志が参加してきて運営の母体ができたようです。なので、ちゃんと地道なコミュニティ活動の結果が適切なタイミングで花開いた、と言えると思います。
今回のイベントで初めてこうしたコミュニティに触れた人も多かったのではないかと思いますが、そうした新たな参加者をどんどん取り込みながら、正式に「アレクサ」の名前を冠したコミュニティができるのでは? と思っています。
この名前が更に求心力を増して、日本のアレクサコミュニティ、エコシステムが一気に拡大しそうですね。もちろん私もこの波をちゃんと捉えていきますよ。