マーケティング、エバンジェリズム、ときどき旅。

ホントに自分がなりたいのはマーケターかエバンジェリストか、はたまた旅人なのかを徒然に書いていくブログです。

AIは自動運転の夢を見るか? -- やっぱり自動運転は普及すると思う理由

先週は、NVIDIA主催のGTC (GPU Technology Conference) 2018に出展のため、San Joseに行ってました。Adobe時代は割と頻度高くSan Jose詣でしていたのですが、気が付けば10年ぶり位の訪問。久々のSan Jose(+LA、Seattle滞在)で感じたことと、昨今の自動運転車の事故の報道、そのうえでGTCで華々しくアナウンスされた自動運転の未来像を見て、「不可避な」流れを確信した部分があるので、ブログにまとめておきます。

10年の変化 -- レンタカー不要な時代に

San Joseといえば、ダウンタウンにショッピングモールや気の利いた飲食店が少なく、クルマ移動が必須なエリア、です。で、10年以上前にAdobeのHQに行くたびに手配していたのが「レンタカー」。日中はほぼミーティングなので、乗っていない時間も多いわけですが、空港ーホテル間や、お店への移動のみならず、特にダウンタウンから離れたお店から帰ってくることを考えると、タクシーは結構捕まえるのが大変+当時はメーターをちゃんと倒してもらうのにも気を遣う必要アリだったので、レンタカーが現実的なソリューションだったわけです。が、レンタカー手配、費用(保険も入れると結構高くつく)、駐車場のない飲食店でのパーキング確保、プラス運転者はお酒が飲めない、などネガティブファクターも多かったのも事実。

今回のSan Jose出張では、もちろんレンタカーの手配はしていません。なにせ、時代はライドシェア。タクシーとレンタカーのネガをすべて払しょく(特にアプリでの場所指定、事前決済はスバラシイUX)するUBETやLyft(私は宗教上の理由でLyftを多用(笑))を使うことで、今回のSan Joseはとても快適に過ごせました。

カンファレンス会場、ホテル、NVIDIA本社を行き来するのも、ほぼ10分~15分ほど時間を見ておけば移動が完了、支払い+レシート取得もサイフを出すまでもない、とストレスレスです。ドライバー側もアプリの指示に従うだけでいいので、普通のタクシーよりストレス少ないのでは? と想像します。(自分でもできそうな気がする)

f:id:hide69oz:20180401231853j:plain

下の写真はSJCのもの。空港にも、App-base Rideshare 専用の乗り場の設置が多くなりましたね。

f:id:hide69oz:20180401232051j:plain

移動したい人 > 運転したい人

私自身は運転が好きな部類ですが、考えてみると日本でも家人に駅まで送ってもらったり、都内でのタクシー移動など、クルマに乗っている時間の多くが運転者側ではなく、乗車側の立場だということに気づかされます。(一方、バイクに乗っての移動は結構積極的にしているのですが、都内は駐輪場問題があり。。。 これについては、また別のブログに書きます)

つまり、誰かが運転してくれればいいわけです。そうすればバスや鉄道にはない「Door to Door」のクルマのメリットを享受できる。クルマ社会のアメリカに出張していると、この「誰かが運転してくれる」ことに対するニーズはすごく高いと感じます。で、これは産業界にも大きな影響がありますよね。トラック、バスといった定期ルートを走る移動体は、結構な比率で自動運転化できるのでは? と。特にSeattleはトロリーバスが数多く走っているのですが、これは架線の設置で移動範囲が完全に決まってますからね。この範囲だけきちんとAIが認識できれば、技術的には行けそう。あとは、社会的なコンセンサスとコスト、ということになります。

まずは産業用無人機(UGV)と、アーリーアダプター向けの高級車から

技術の普及については、クラウドの例を見るまでもなく、コストは重要な観点です。初期にこのコストを負担して普及促進してくれる「顧客」が必要です。で、適用技術を理解しなくても、便利と感じるパッケージになっていれば、利用者が増える=>コストが低減する => 更に技術に投資が進む、というサイクルが生まれます。これを大規模に進められるのが産業用の無人車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)と富裕層向け高級車ではないかと思います。

GTC 2018会場にもそれをUGVの未来を示唆する一台が。荷物さえ運べれば良い、ということになり効率を追求するとこういうカタチになりそうです。

f:id:hide69oz:20180401231635j:plain

f:id:hide69oz:20180401231704j:plain

更に、ドローンと組み合わせると、エリア間の移動はUGV、エリア内はドローンという仕組みもいけそう。これはAmazonが出している特許のようですが、合理的ですよね。

 ちなみに、同じUGVでもこれはやりすぎかな (笑) 

f:id:hide69oz:20180401231443j:plain

高級車でいうと、San Joseのみならず、LA、Seattleでも結構テスラが走っていますが、このテスラの躍進も自動運転普及に向けて大きなカギになっていると思います。

要はポートフォリオ。完全自動運転でなくてもメリット大

では、実際のところ自動運転はどこまで来ているのか?  前述した通り、テスラに乗っている人を沢山みましたが、私が見かける街中(特に交差点)ではハンドルを握っているドライバーがほぼ100%で、交差点の多い街中では、完全自動運転はまだまだ先の状況かなと思います。

GTC直前にニュースになった自動運転車の事故の報道とかをみても、社会的コンセンサスを得るにはまだ時間がかかるかもしれません。

jp.techcrunch.com

ですが、先のAmazonの特許にあるようなドローンとの組み合わせも含め、全てを自動運転技術に頼らなくても良いとなれば、そのほうが普及も早いし、コストも安くすむかと。たとえば高速道路、幹線道路、及び自宅の車庫入れや出先でのパーキングへの出し入れだけクルマ側でやってくれれば、混雑する街なかや、自動運転の要件が揃わないエリアでは人間が運転しても疲労度は全然違いますよね。 GTCで発表されたTRI(Toyota Reserch Instistute)のセッションでは、自動運転を「ガーディアン」と「ショウファー」の二つのモードに分類して研究を進めているとのこと。

2つのモードのうち、ひとつは「ガーディアン」(Guardian)で、もうひとつは「ショウファー」(Chauffeur)です。
ショウファーは皆さんが思うような自動運転の形です。人間の代わりになって完全に自動で運転するものです。これが最終的な目標ではあるのですが、実はいま面白いのはガーディアンの方です。私たちはこの技術を通じて、常に人が運転するのを監視し、必要な時にだけ介入(関わる)という技術です。潜在的に潜んでいるクルマの衝突や事故の可能性から守るためのしくみです。
ショウファーは、車が運転しますから車に責任があるわけですが、ガーディアンはドライバーが運転してドライバーに責任があるとされつつも、AIがその手助けをするということです。

引用元の記事はコチラ。インフラではAWSGPUインスタンス(P3)とFPGAインスタンス(F1)が頑張っているようです。

robotstart.info

「ガーディアン」機能が進むだけでも、メリットのある業界は多いかと。例えば、運送業では、ドライバーが「運転+配達作業+運行管理」のマルチタスク作業から少しでも解消される事になるでしょう。GTC会場にあったこのトレーラーもそんな近未来を示唆する一台。

f:id:hide69oz:20180401232511j:plain

自動運転が普及する理由:そこにニーズがあるから

今回、確信したのは技術的背景もさることながら、自動運転(ガーディアン型含む)へのニーズが大きいことをアメリカで実感したからです。で、これは日本でも同じことが言えますね。例えば、自動運転技術でドライバー側の負担が減れば、ライドシェアにクルマと自分の時間を提供する人も増えるかと。東京だと移動手段にこまることはない(渋滞、混雑には困りますが)ですが、地方都市にいくとクルマがないと買い物一つできないエリアも多々あるわけで、これが高齢者がいつまでも運転をし続けなければならない背景にもなっています。自動運転やライドシェアが高齢者のDoor to Doorの移動をカバーすれば、もっと住みやすい環境になりますね。画像認識+AI+移動体制御技術が一定レベルに達すれば、年齢やその日の体調でスキルが変動する人間が運転するよりも、よっぽど安全かもしれません。なので、この自動運転やUGVに対するニーズが増大するのは「不可避な」流れだと思います。自動運転技術がない移動体は、今後マイノリティになっていくはずなので、自動車メーカーのみならず、他業種からも、この「自動運転」市場に更なる参入=競争激化で、イノベーションが進むことになりそうです。先頭を走るのは、いろんな環境を考えると米国と中国、かな。内燃機関の自動車メーカーの多い日本ですが、官民ともにこのゲームチェンジにどのように対応するのか、気になるところです。