これまで、コミュニティマーケティングの文脈では「オフラインを起点にすることがコミュニティの成長には欠かせない」というオフラインファーストの重要性についてお話してきましたが、それをやりたくてもできない状況が急速に広がっています。
そう、新型コロナウイルスへの全社会、いや全世界的な対応です。
そこで、2020年4月時点の情報をもとに、今後のコミュニティマーケティングで変化するであろうポイントについて書いてみます。ただ、暫定的な情報や、自分自身でも実際に検証できていないことも含んでいるので、現時点での考えという事でお伝えできればと思います。
外部環境の変化:新型コロナ対応での3密対策の急速な広がりと長期化
まず、前提となる外部環境の大きな変化について、簡単に整理しておきます。当初は中国や日本限定のように思われていた新型コロナウイルス感染症の影響は、欧米を中心に全世界的に広まり、今は人との接触や移動をいかに避けるか=Social Distancingが世界共通のテーマになってきています。コミュニティマーケティングで重要視してきた、「熱量の伝播」は、まさに「密閉」「密集」「密接」の3密な空間が、発火点としては最適な場の一つだったわけですが、逆に、現在この3つの「密」は最も避けなければいけない社会情勢となっています。さらに、オリンピック開催の夏ごろには状況改善するのでは、という漠然とした期待値(私もそう考えていました)は完全に覆され、この状況はより拡大、長期化するのは不可避な流れとみるべきでしょう。
今どきイベントの #三種の神器 pic.twitter.com/luBLbRDNMR
— Hideki Ojima @ パラレルマーケター (@hide69oz) 2020年2月20日
※オフラインイベントも、これさえあれば、、、と思っている時期がありました。
言い換えれば、今後「オフラインファースト」に固執するのは、現実的とは言えない、という事になります。
おさらい:コミュニティ成長のための3つのファースト
まずはおさらいです。こちらの書籍でも書いているのですが、
コミュニティマーケティングの目的は、Sell Through the Community を実現すること、にあります。
そのために必要となるコミュニティの成長促進に欠かせないのが、以下の3つのファーストです。
どんな関心軸、方向性のコミュニティにするかをクリアにしておくコンテキストファースト、コミュニティから様々なアウトプットがされることで、コミュニティの外から見つかりやすくし、コミュニティへの新規流入を促すアウトプットファースト、この二つは、コミュ二ティの成長には必要不可欠ではありますが、それだけではコミュニティは成長軌道になかなか乗りません。やはり、熱心なファンや「ファーストピン」と呼ばれる層から、他の参加者への熱量の伝播があってこそ、成長のための駆動力が得られるのです。
で、その熱量が生まれる着火剤的な役割を担っているのが「オフラインから始める」というオフラインファーストの考え方なわけです。
ちなみに、一度オフラインで発火した熱量を、さらにスケールさせて伝播させる場としてオンラインを効果的に使う=オフライン→オンライン→オフラインを繰り返すモデルを書籍の中でもススメしています。オフラインは火をつける場所、オンラインはそれを広げる場所という組み合わせですね。
オフラインファーストの役割を分解する
では、コミュニティの初期に、オフラインだとなぜ熱量の伝播がしやすいか? それは皆さんにも経験あると思いますが、誰が合意しているか、誰に響いているか、が画面越し(オンライン)より圧倒的に感じやすく、結果的に共感の連鎖が促しやすいから、です。
人前でプレゼンテーションすることが多い方なら経験があると思いますが、オフラインとオンラインでは、参加者の反応や納得感の見え方が全然違いますよね。オフラインの方が状況把握、対処しやすいので、結果的にプレゼンの質も来場者の満足も上げやすいです。これはプレゼンする側だけでなく、話を聞く側でも同じように作用します。
なぜオフラインだとそうなのか、その理由を分解してみると、以下のように整理できます。
- 安心できる場の提供:そこがどんな場なのかがわかりやすいので、参加者が安心する。その結果、周りの状況が見えやすくなる。
- 反応が伝わりやすい:ちょっとしたうなずき等のリアクション、笑い声など人の反応がリアルに伝わりやすい。共感が広がりやすい
- 行動が行動を呼びやすい:先に行動している人に気づきやすい、見つけやすいので、安心してフォローできる。結果行動やアウトプットの連鎖が起こりやすい。
逆にこれらの要素を実現できれば、オンラインだけでも熱量の連鎖を作れることになります。その場合、どのオンラインツールを使うか、という事以上に重要だと思われるのが、初期メンバーの集め方と、ファシリテーターの力量です。
初期メンバーの重要性
特にコミュニティ立ち上げ期においては、コミュニティを構成する層の比率も重要になってきます。コミュニティマーケティングでは、コミュニティ参加者を3つのレイヤーに分類していますが、特に初期に必要なのはリーダーとフォロワーの層になります。
もし、ワナビーズばかりだったら、オンラインどころか、オフラインの場であってもコミュニティ参加者に行動変容は起きづらいです。コミュニティに初期に集めるべき人たちは、行動の連鎖が起きやすい、リーダーとフォロワーな方々をセットで集めることなのです。
では、このファーストピンな人を適切に集めて、コンテキストファースト、アウトプットファーストができれば、オンラインから始めても成長するコミュニティが作れるのか? その答えはおそらくYESです。
リモート、オンライン前提時代のコミュニティマネージャーに必要なコト
既に触れたとおり、①既に成長軌道にある、かつ、②リーダー、フォロワー、ワナビーズの構成が適切であるところは、コンテキストファースト、アウトプットファーストをより意識しながら、オンラインで継続的に成長することができるでしょう。
これは、JAWS-UGをはじめとする既存コミュニティの勉強会が、コロナ対策を機に一気にオンラインへ移行できているところからもうかがえます。
では、その条件を満たしていない「これからコミュニティを立ちあげたい」「コミュニティ立ち上げ途中」な場合ではどうなるか。これをオンラインで進めるうえでのポイントをシンプルに言えば、3つのファーストのうち、オフライン以外のコンテキストファースト、アウトプットファーストをもっとしっかりやる。そして、オフラインファーストで実現していたことを別の手法で代替する、という事です。まとめるとこんな感じ。
- コンテキストファーストの徹底:いままで以上にコミュニティのゴールや関心軸を明確にする
- トラストファーストの実施:コミュニティのファーストピン候補(リーダー層/フォロワー層)との信頼の醸成を最優先。安心できるメンバーと場づくりを行う。このステップを飛ばしてのコミュニティ拡大は失敗のもと。
- アウトプットファーストの工夫:オンラインならではの、アウトプットの促し方を考える。
安心できるメンバーであれば、オンラインでも濃い時間を共有できるのは、昨今のZoom飲みの流行からもうかがえますね。
また、AirBnBあたりでは、オンラインでの「体験プログラム」も始めたようです。オンラインから始めるときのコンテキストの立て方等、いろいろ参考になりますね。
トラストファーストをオンラインで実現するには?
近道はありません。正攻法で行くしかないと思いますが、次の3ステップを意識するといいでしょう。
- ステップ1:正しい候補者=コミュニティのコンテキストにあったファーストピン候補を見極める。
- ステップ2:コミュニティスタートの前に、個々の候補者とのパーソナルな信頼を構築する。初見の場合は、オフラインの接点がある人に紹介してもらうのも有効。
- ステップ3:候補者同士をオンラインでつなげ、コンテキストの共有と具体的なアクションを設定する。
が、言うは易し、行うは難し。これは、コミュニティマネジメントやファシリテートする人の力量がますます問われることになります。一方で、直接会うよりも、お話する機会は多く持てる(特に遠隔地の場合)わけで、ネガティブな点ばかりではないことに注目しましょう。うまく進めることができれば、オフラインからスタートするよりも、早い成長につながるかもしれません。
変化を受け入れ、対応する。それがマーケティング
もちろん、オフラインの場がコミュ二ティにポジティブな影響を及ぼすという事実には変わりはありません。ただ、冒頭で触れたように withコロナ時代では、オフラインの比率は大きく下げざるを得ない状況が続くと思います。
一方で、今後想定される景気後退や市場環境の大きな変化は、ロイヤリティの強い顧客層によるLTVの向上や新規顧客へのインフルエンスを持つビジネスの強さをますます際立たせることになるでしょう。であれば、オフラインの場が少ないからと言って、コミュニティマーケティングをやらない理由にはなりません。むしろ、今から進めておくべき施策の一つか思います。
コロナ禍がもたらす影響、これをしっかり受け止め、オンライン起点でのトラストやコミュニティの成長パターンを生み出していきましょう。皆さんがトライした事例や得られたTIPS等については、ぜひCMC_Meetup でも共有を!