AWS時代の元同僚であり、友人でもある玉川さん率いるソラコムがまたまたやってくれました!
あえて提携先のKDDIさんのリリースを貼っておきましょう。
*これはSORACOM サービスローンチ1周年記念リレーブログ -- 10月21日分のブログです
ソラコムショック再び
元AWSメンバーが多く所属するソラコムがそのベールを脱いだのが丁度1年前の9月末日。従来は数十億という設備投資が必要とされた携帯通信ネットワークのバックエンドシステムをAWS上にソフトウェア的に実装し、特にIoT用途に向いた低料金、それもデバイスからの登り通信帯域にフォーカスしたモデルの登場は「ソラコムショック」と呼ばれ、業界の注目を一気に集めたのは皆さんも記憶に新しいところだと思います。
そのソラコム一周年をお祝いする上でリレーブログを書きますよ、と玉川さんには伝えていたのですが、自分の番になる直前で冒頭のスゴいリリースが。リリースではよくわからない、という人向けに玉川さんとCTOの安川さんのインタビュー記事もはっておきましょう。
もともとリレーブログには違う話を書こうと思ってたのですが、このビッグウェーブに乗るしか無い、という事で今回発表された「SORACOM vConnec Core」の何がスゴいのかについて、自分なりの考えを書いておこうと思います。
大手キャリアがソラコムクローンの開発を諦めた?
昨年ソラコムが業界の大きな驚きとともにローンチした時、クラウド時代の素晴らしい実装とサービスだなと思ったのですが、同時に「寝た子を起こす」サービスだとも思いました。なぜならソラコムのようにクラウドベースで携帯通信のバックエンドシステムが作れる事が世間に周知されたわけですから、大手キャリアがすぐにキャッチアップしに来ると思ったわけです。
クラウドやIoTがスピード勝負のビジネスである事はどのキャリアもわかっているはずです。ソラコム登場以前であれば、このアイデアを大手キャリアが社内で通すのは説明が大変だったと思いますが、今や説明不要なのであとはGoするだけだと思ってました。実際、ソラコムのサービス自体が少人数の開発チームで一年前足らずで商用サービスにまでこぎつけた話を聞くと、大手がソラコムクローンを出すのにそう時間はかからないだろうと。この一年、ソラコムも様々なサービスを追加してきてましたが本質=競争力の源泉はクラウドベースのバックエンドシステムであるはずなので、ここを大手キャリアにキャッチアップされると苦しくなるかな、というのが私の懸念事項でした。で、予想通り今週KDDIさんから同種のサービスが出てきたわけです。一点私の予想と違っていたのはバックエンドシステムが「ソラコムそのもの」だったところです。そう、KDDIさんはこの部分を内製していないわけです。これは何を意味しているんでしょうか?
そう、ソラコムのコアの部分は簡単にクローンできない=技術的にかなり高度であるという可能性が高そうです。
KDDIさんは、この部分が自社内製でない理由を「急激なIoTニーズの高まりに、早く商用サービスを提供したかった」と説明しているようですが、案外自社開発のハードルが高かったのではと推測します。KDDIさんをしてこのような決定になったところを見ると、他のキャリアでも同じような流れが加速するのでは無いでしょうか?
Pace of InnovationのDNA
大元のコアシステム、サービスが簡単にクローンされないとなると、この一年でソラコムがコアシステムの上に多彩なサービス(AirからはじまってGateまで8サービス: 2016年10月20日時点)を積極投入してきた部分が俄然生きてきます。このまま他のキャリアがキャッチアップできないまま独走にはいる可能性も秘めていて、数年前のAWSを見るようです。特にサービス開発のスピードや手法はAWSのPace of Innovationのカルチャーをうまく引き継いでいるなと思いました。
これは頭で分かったつもりになっても、チームや組織として実践するのはなかなか大変なことですが、今のところ上手く機能していますね。 ソラコムを競合として見るのであれば、このPace of Innovationのカルチャーと正面切って戦えるか、よく考えた方が良さそうです。
ビジネス上のインパクト
ソラコムのビジネスドメインはIoTであると明記されています。という事は、最終的な顧客は法人層である事が多く、この辺りは多くの「格安SIM」ベンダーとは大きく異なるところです。(一部ではソラコムを格安SIMのベンダーと誤認しているシーンもーみられますが)
今回の提携で、KDDIさんの法人営業経由でソラコムのサービスを訴求する事ができるわけでこれは大きなチャンスと言えます。話題のIoT分野のスタートアップという位置付けから、一気にメインストリームに踊り出るのも現実的になってきました。現在IoTの導入検討やPoCを進めている大手企業が多くありますが、会社自体は保守的なところが少なくありません。そのような状況においてソラコムの先進性とKDDIの安心感がシナジーを生み出すと考えられ、ビジネス的も今回の発表は大きなインパクトがあったと言えます。IoT関連のスタートアップ、大手企業ともに今回の発表を聞いて驚いたところが多かったのではないでしょうか。
もちろん、絵に描いたモチにならないよう、KDDIの法人営業チームにきちんとした販売シナリオや用途のトレーニングを行うのが重要になってくる、つまり、優れた技術者だけでなく、ビジネスサイドのドライバーがソラコムにも増えてくる必要があるでしょう。ソラコムのサービスだけでなく、組織がどのように拡大していくのかについても要注目ですね。これからもソラコムの動向には目が離せなさそうです。
今日(10/21)まで開催されている日経IT Pro Expoにソラコムブースが出ているようなので、行かれる方はこうした背景も頭に置きつつブースで質問などされてはいかがでしょうか?
※撮影: 集合写真家 武市真拓