マーケティング、エバンジェリズム、ときどき旅。

ホントに自分がなりたいのはマーケターかエバンジェリストか、はたまた旅人なのかを徒然に書いていくブログです。

マーケターだからこそ陥りやすい、コミュニティマーケティング失敗に至る10のパターン

このブログは、コミュニティマーケティング Advent Calender Day3のエントリーです。

adventar.org

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この2年ほど、様々な製品、サービスでのコミュニティマーケティングの支援、相談に関わることが多くなり、実はAWS時代よりもかなり経験値が上がってきています。その中で遭遇した、マーケターであるが故に陥りがちな「うまくいかない」パターンもはっきりしてきたので、まとめてみたいと思います。

この中の1つでも該当していると黄色信号、3つ以上該当するものがあれば、間違いなく赤信号な感じ。尚、基本的にはB2Bのケースということで見ていただければと。

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インセンティブプログラムの導入

コミュ二ティマーケティングのキモは、サービスやブランドのファンが本心からその良さを語るからこそ、メッセージに力強さが生まれ、結果的に新規ユーザを多く獲得することにつながるところにあります。この「顧客の声」をもっと獲得しようとするときに陥るのがコミュニティ活動に金銭的な対価を支払うインセンティブプログラムを導入してしまうこと。インセンティブプログラム自体は、マーケティングではよくある手法ですが、コミュニティマーケティングとの相性は良くありません。具体的には、1)無償でアウトプットしてきたファンの熱を冷ましてしまう(多くの場合、コミュニティ活動とインセンティブ金額が釣り合わなく感じる、またはインセンティブが無い時にアウトプットをしたくなくなる)、2)ファンでもない人がインセンティブ目当てで、本心ではない(事実ではない)アウトプットをする、という2重のネガティブな行動を引き起こすことがあります。いずれも、コミュニティマーケティング最大の機能である「コンテンツ生成」力の質的、量的低下につながるので、悪手と言ってよいでしょう。

インフルエンサーマーケティングとの混同

コミュニティマーケティングは、口コミ的な伝播力を使うことから、該当サービスのファンでもないのに、ついインフルエンサーを使ってしまいたくなることがあるようです。有償でのインフルエンサー契約の場合、お金の切れ目が情報発信の切れ目となりますし、認知は得られても見込み顧客の共感が得られない(本当のファンではない人のコトバは、長期間にわたって響くことはない)ことになります。また、無償でコミュニティに引き入れることができたとしても、インフルエンサーは自分の「インフルエンス力」を増すために結果的にコミュニティの場を踏み台にしてしまうこともあるので注意が必要です。

コミュニティで大事なのは、インフルエンサーではなく、本当のファンであることを忘れてはいけません。まれに、本当のファンの中にインフルエンサーが混じることがありますが、あくまでもファンであることが主となります。

※コミュニティマーケティングとしてではなく、従来のマスマーケティングの1チャネルとしてインフルエンサーを使うのはアリだと思いますが、コミュニティマーケティングとは別物であることを忘れてはいけません。

③集客「数」からスタート

コミュニティを立ち上げる時には、どんな「関心軸」で人を集めようとしているのか、最初期から設計しておくことが重要です。セミナーやイベントのような感覚で、「まずは集客!」と始めてしまい、その後にコミュニティの方向性を決めようとしても、集めた人たちの関心軸がバラバラでまとまらないことも多くあります。まず集めるべきは人数ではなく、設定した関心軸に共感する人たちである必要があります。

④製品ローンチ前にスタート

意外とよく聞かれるのがコレ。前のめり過ぎて、製品がローンチしていないのに「コミュニティマーケティングをやりたい!」と言い出す現象です。製品ローンチ前や、ローンチしてても製品の熱心なファンがいない時期は、コミュニティマーケティングを始めるには早いと言えます。まずは、ユーザーの獲得、そしてそのユーザーの中で成功者を産み出すことが先決です。そういう意味では、コミュニティマーケティングの前に、きちんと製品ローンチを行い、カスタマーサクセスに専念することが先決ですね。

⑤既存ユーザだけに限定

参加者のコンテキストを合わせる上では、間違っていないように見えますし、多くの会社で既存ユーザを主体にしたユーザ会を組織していたりします。もちろん、こうしたユーザーとのエンゲージメントや製品へのフィードバック主体の会であれば全く問題ないのですが、「ユーザーが新規ユーザーを開拓する」というコミュニティマーケティングの目的からすると、これでは合致しない部分が多くあります。

下の図でいうと、ファネル上位の「見込み顧客に対するアプロ-チ」の部分ががかけてしまっていることになります。そのためには、コミュニティには既存だけでなく、見込み顧客も多く参加できるようにならなければスケールしないのです。

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ちなみに、既存ユーザ主体のユーザ会を既にお持ちの企業の場合、これはそのまま継続して、オープンなコミュニティを新規に立ち上げる場合と、旧来のユーザー会を発展解消して、オープンなコミュニティに統合する場合の2パターンがあります。

⑥刈り取り系セミナーとの混同

これもよく見られるケース。見込みユーザー層が参加することから、よくある刈り取りセミナーのように案件にコンバージョンしたがる場合がありますが、これではスケールするマーケ施策になりません。コミュニティ参加者から、更に外部に向けて製品やサービスに関するコンテンツが生成されること(Sell through the Community) が重要なので、刈り取り型のセミナーのように参加者へのセリングを強くしては(Sell to the Community)マーケティング的な拡がりがなくなります。見込みユーザー層に対しては、コミュニティがあくまでもデマンドジェネレーションの場で、そのあとの案件化(リードクオリフィケイション)は、別のセミナーやキャンペーンを用意するようにしておきましょう。

※もちろん、参加者が導入の意向を示した場合は、営業的に対応するのは問題ありません。

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⑦売上に直結したKPI設定

これも⑥と一緒によく起こる現象です。KPIの設定自体は、もちろん重要です。しかしコミュニティマーケティングのKPIとしては、生成されるコンテンツの数や、ミートアップへの新規参加者比率、さらにミートアップ自体の開催頻度やエリア拡大をおくべきですが、売上と直結するKPIが設定されることがあります。この手のKPIはあくまでも刈り取り型のセミナーやキャンペーンでカバーするもので、コミュニティマーケティングのKPIに置くと本来の目的から外れていく事になります。

⑧セッションコンテンツに頼った集客

セミナーであれば、スピーカーが誰か、どんなテーマを話すか、というセッションコンテンツが集客の大きなドライバーになりますが、コミュニティがある程度成長してくると、参加者同士が合えることに価値を見出してくるものです。なので、ミートアップの集客が毎回スピーカー頼みになるのは、まだコミュニティとして成熟しておらずセミナーの域を出ていない可能性が高いでしょう。スピーカーに関わらず、この場でコミュニティメンバー同士が会えることを参加目的にする人たちが一定数いないのは、コミュニティマーケティング的には厳しい状況と言えます。「学びたい」と「会いたい」がバランスするような運営をする必要があります。

⑨コミュニティ参加者をお客様扱い

ユーザーを丁重に扱うのはもちろん大事なことですが、ことコミュニティに関しては最終的に運営も含め自走してもらうことが理想的です。そのためには、コミュニティの場は自分の場として認識してもらい、主体的に動いてもらう必要があります。いつまでもお客様扱いしていると、自走がなかなか始まらないことになります。

⑩売上規模などの組織ヒエラルキーの適用

リード獲得時には必須でもある、参加者の所属企業の利用金額や予算規模がわかると、そうした数字が大きい人を優先対応しがちですが、コミュニティはあくまでも参加者の熱量が重要。個人>組織です。個人の熱量を無視して、会社規模などで登壇者やコミュニティリーダーを選んだりするとコミュニティ発展の芽を摘んでしまうことにつながりやすいです。(もちろん、熱量の高い人が、大企業に属している場合は問題なし)

組織のヒエラルキーではなく、個人の熱量を重視するようにしましょう。

 

いかがでしょう? 該当する項目がありましたか? コミュニティマーケティングの本来の目的や、マーケティングファネルにおける位置づけを誤ってしまうと、似て非なる活動になってしまうこともあります。今日のブログではDon't の部分にフォーカスしましたが、Doの部分については、こちらの資料もご参照ください。

www.slideshare.net