マーケティング、エバンジェリズム、ときどき旅。

ホントに自分がなりたいのはマーケターかエバンジェリストか、はたまた旅人なのかを徒然に書いていくブログです。

AWS 太平洋戦線をかく戦えり。

この週末は旅に出ている予定だったのですが、諸々あってキャンセルに。そうしたら、現ウフルの八子さんから、八子さん主催のクラウド系の勉強会でお話ししませんか? とのご連絡が。すでに、登壇まで24時間切っていましたが、これまでの振り返りをするいい機会でもあると思い、お受けしました。とりあえずその時に決めたタイトルが「AWS 太平洋戦線をかく戦えり」。

で、表紙に使おうと思った写真がコレ。

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先日のアメリカ東海岸旅で久しぶりに再会してきた空母「INTREPID(イントレピッド)」。第二次世界大戦から、ベトナム戦争までを戦い抜いた歴戦の空母ですが、退役した姿がちょっと自分にも重なりつつ、の採用です。

ヨコ(競合)を見るのではなく、前(顧客、市場)を見よう

 当日の会合のお題は゛日本のクラウドの「今と今後」゛。私自身は、国産ベンダーで働いた経験はない+AWSの今後を語る立場にはないので、あくまでもAWSでやってきた事実ベースのお話しと、外から国産クラウドベンダー(主にIaaSレイヤ)の皆さんを見てきて思ったことを交えお話ししました。

お伝えしたかったことを一言でいうと、「自分の顧客、市場はどこか」を理解、定義することがとても重要ということです。AWSのサービス自体の競争力(機能、料金とも)が非常に強いのは私がこのビジネスに関わった7年前も今も変わらない(というか、より強くなっている)わけですが、そのAWSと同じ市場を戦うのか、それとも違う市場で勝負するのか、国産ベンダーの皆さんは少し曖昧だったのではないかと感じていました。実際、「EC2に比べて」とか、「S3のAPI互換で」といった、個々の機能や価格でのピンポイントでの比較の話が多かった(今でも!)ように思います。もちろん、そうではないベンダーさんや担当の方もいたと思いますが、私が外から見ていた限りは前(顧客、市場)を見るより、ヨコ(競合製品)を見ていた人が多かったように感じています。

顧客、市場を見る重要性は、以前もブログで書いた通り。

stilldayone.hatenablog.jp

 

製品力があれば勝てるほど、ビジネスは簡単ではないと思っています。現に、AWSが日本でスタートした時のポジションは結構逆風だったわけです。

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ビジネスに「IF」は禁物ですが、日本の市場だけで勝負するのであれば、AWSも盤石だったわけではなく、あらゆる顧客層にリーチするのは到底できない状況でした。実際、「(米国とは市場が違うから)、日本でAWSは流行らない」と対面で言われたことも多々ありました。であるのであれば、日本の顧客、市場に合わせた戦略で、国産ベンダーがマーケットをとることもできたはずです。

詳細はスライドを見ていただければいいと思いますが、その当時のAWSの日本における市場設定は「アーリーアダプター」の獲得であり、そのための戦略は「ボーリングピン戦略」です。いわゆる「キャズム理論」に基づいたやり方で、別に特殊な考え方でも手法でもないのですが、思いのほか同じアプローチをされている方は少なかったように思います。

キャズム理論については、はぜひこちらを。古典ですが、今でも十分通用する書籍です。

 

5年たっても変わらないマインド

当日は国産クラウドベンダーの方々のプレゼンを拝聴する機会があったのですが、その中でも、「お客様が皆クラウドを望んでいるわけではない」とか、「SIからすると扱いづらいと思うので」、というクラウドファーストな視点からは程遠い、クラウドへのネガティブバイアスに同調しすぎたお話しをする方も複数見られました。AWSが東京リージョンを開設して、地理的なハンデを克服してから=直接的な競合になってから5年たった今でも、対抗軸の国産ベンダーさんがこうおっしゃるのは残念な気がしました。やはり新しいマーケットを一緒に作っていくプレイヤーであれば、真の意味でクラウドファーストなパッションを(少なくとも事業責任部署や企画担当であれば)持ってほしいところです。その思いがないと、新しい市場を攻略するのは、社内的にも社外的にもかなり困難に思います。もちろん、クラウド市場を立ち上げたくない(=現状ビジネスを延命、または拡張したい)、というのであればネガティブバイアスを利用する戦略もあるでしょう。また、クラウドはあくまでも品揃えの一つで、マーケットを取りに行くつもりはなかった、というのであればそれも納得です。でも、会場にいた多くのベンダーの方が、「今後クラウドファーストになる」「その市場で成功したい」と思っていらっしゃるとのことだったので、なおさら不思議な感じになったわけです。本気でやる気がないと、勝負には勝てないですよね。

クラウド戦役は第二幕へ

(IaaSの)アーリーアダプターをめぐる、第一次クラウド戦役はほぼ終了したと思います。これからはマジョリティの方へのクラウド浸透を推進したり、クラウド前提のIoT、ビッグデータ、AI、VR、決済周りの新しいアーリーアダプター獲得といった次の戦場に移ってきているというのが私の認識です。当然ながらAWSもこれまでのやり方から、新しい市場に向けた体制、戦略に急速にシフトをしているわけですが、その時に第一次クラウド戦役と同じ轍を踏むのか、新しいアプローチで国産ベンダーが先行するのか、注目したいところです。

先日、元マイクロソフト(現LINE)の砂金さんと、第一次クラウド戦役を振り返る(+ちょっとだけ将来展望を語る)対談がありまして、このあたりについても語っています。もしよろしければ、こちらも併せてごらんいただければと。

thinkit.co.jp

週末発表したスライドはコチラに。何かのご参考になれば幸いです。では、Good Selling!

www.slideshare.net