カワサキ最速列伝 -- Supercharged! なブランド物語戦略
先日、自転車での東海道53次走破を終えた日、京都・三条大橋へのゴールがお昼過ぎでまだ半日時間があったので、自転車は宅急便で自宅に返送し、ふらりと神戸まで行ってきました。目的はコレ。
レストアされた三式戦「飛燕」
7月に鹿児島に出張した際、レンタルバイクで知覧(特攻平和会館)まで行ってきたのですが、その時の目当ての展示品の一つが三式戦「飛燕」。が、その時には修復中ということでそこには飛燕はなく、残念な思いをしたのですが、まさかそのレストア作業がこんなに大がかりだったとは。
今回のレストアは飛燕のメーカーである川崎重工の120周年記念行事的に行われていて、外装のレストアがほぼ終了したところで、神戸で特別展示という流れに。
この展示は期間限定(~11/3)なので、早くいかなきゃと思っていたのですが、京都まで来ていて半日自由にできるとなれば行かない手はありません。新幹線で30分で新神戸へ。新幹線早い!
ポートライナーに乗って展示会場へ。駅外にすぐに看板が出ていたので迷わずに到着。
で、会場に入った途端にドーンと。
想像以上の人だかり。ちょうど川崎重工の人がレストアプロジェクトについてのプレゼン中でした。とりあえず、いろんな角度から写真を。
飛燕というと、知覧に置かれていたときの迷彩カラーのイメージが強かったのですが、シルバーの地肌が出ているとずいぶんとシャープに見えますね。
Superchareged! なブランド物語戦略
で、今回感心したのは、このレストアを単なる戦争体験云々とはむずびつけず、現在の川崎重工のブランドと結び付けているところ。バイク好きの方には、最近カワサキからH2Rというスーパーチャージャーで加給されるエンジンを積んだモンスターバイクが販売されているのはご存知の通り。
H2Rがどれくらいモンスターかというと、ストック状態で300馬力&時速300Kmオーバーなスペック。最近はトルコで市販車&公道での時速400kmチャレンジに成功しています。
飛燕は、当時の日本の戦闘機には珍しく液冷&過給機で、高速を狙った戦闘機です。液例ならではの流麗かつ特異なデザイン、そして機体、エンジンとも当時の川崎航空機が手掛けており、川崎重工のDNAを象徴させる工業製品としてはわかりやすいアイコンになりえます。エンジンは当時のドイツ・ダイムラーベンツのエンジンをライセンス生産するカタチだったので、開発自体はは川崎オリジナルではないとも言えますが、当時の川崎航空機のレベルの高さを示すには十分かと。
なので、単に機体のレストア紹介だけでなく、エンジンについても展示や説明が充実していました。ちなみにV型エンジンを通常とは上下逆に取り付けています。前から見るとシリンダー部がハの字に見えますが、エンジン形式名の「ハ40」の名前の由来は、もしかしたらこの外見に由来していたのかも。
で、今回の展示は飛燕を「当時最速を狙った戦闘機」と位置づけ(実際は、最速の戦闘機というわけではなかったのですが)、「現在の市販車最速バイク」に位置付けているH2Rにつながる系譜として紹介。エンジンがどちらも過給機付きということで、随所に「最速」「Supercharged」というコピーを使い、関係性をアピールする念の入れよう。
会場限定のグッズでは、飛燕とH2Rのシルエットに、「Supercharged」のコピーを入れたTシャツやマグを販売。ええ、私も思わずTシャツは買っちゃいました。
展示もH2Rを何台か会場に配置して、飛燕だけのイメージに終わらないような配慮が見られました。バイクマニアっぽい人ももちろんいましたが、会場に来ていたのは家族づれが多かったように思いましたので、「カワサキ」のブランドイメージは強烈に子供たちに頭に焼き付いたのではと思います。
バイクマニア向けには、懐かしの750 turboも。これも過給機つながりで、よく考えられています。
どんな企画書だったのか?
今回の展示が、もし飛燕だけだったら、そして現在の商品との関連性を具体的にアピールしなければ、飛行機マニアだけが集まるイベントになって、川崎重工のブランドイメージにはほとんど響かなかったと思います。が、結果的にはこの過去の遺産を、最新の製品につながるストーリーとしてアピールした今回の手法はすごく関心しました。製品の特性やブランドの重要性を理解できていないと、こうしたストーリーは思いつかないですよね。カワサキって、こうした宣伝、プロモーションがあまり上手ではないイメージを持っていたのですが、そのイメージは私の中では完全に払しょくされました。できれば、このプロモーションを企画して、社内で稟議を通した人に話を聞いてみたいですね。私自身もこの展示にヤラレタ一人で、次はぜひカワサキのバイクに乗ってみたいと思った次第です。
尚、タイトルにも使った「物語戦略」は、こちらから拝借してきたコトバ。これもブランを考えるマーケターはぜひ読んでいただきたい一冊。